誰も知らない

おじいちゃんの癌が転移した。高齢ということもあり、完治は無理なのでどう癌と共存していくかが治療の焦点らしい。本人はもう来年には自分はいないものだと考えていて、数年前から始まった生前贈与も結構な額になった。「嫁に行くまで生きていたかったなあ…」という言葉を聞いて結婚しなきゃ。と思った。もともと超結婚したかったけど、それとは違う使命感というかあっ、やばい、いますぐしなきゃ。ってかんじ。

幸い結婚したい人はいる。共働きだし子供がいるわけでもない。生活もいまとさほど変えずに行けるのでは?と思っている。昔から結婚したら遊べなくなるというみんなの決まり文句みたいなのがよくわからない。お金もおじいちゃんや両親からもらったお金、それに自分の貯金を合わせたら十分すぎるほどある。おじいちゃんがくれたお金の使い道としては1番喜ばれる使い方ではないか。

あとは相手の同意が必要。これが1番大事。今の私は超自己中である。納得してもらえるかな〜。そんなことを考えていたらほとんど寝ずに夜が明けた。地味に辛い。

指輪パカっ!サプライズ!きゃー!みたいなのにもちろん憧れているけど、そもそも向こうは私の指のサイズ知らないし、共同経営責任者に必要なのはサプライズではなく話し合いだし、このタイミングでたまたま朝井リョウの結婚を知って、その経緯を読む限りやっぱり話し合い最強と思ったし。クリスマスイブに帰宅したら泥棒に荒らされたような部屋の中にただひとつ天井までの巨大本棚が鎮座していたときに十分サプライズは味わった。指輪パカっしてもらった人と受け取ったサプライズ量は同等かそれ以上だろう。もう十分や。 

担当の先生は若くて、内容とは裏腹に軽快な口調で治療方針の説明をしてくれた。本人や家族への説明なんてきっと毎日でいちいち感情を込めていられないだろうし、感覚も麻痺してくるし、あまり深刻にすると患者側が滅入るしでどんどん軽くなっていくんだろうなあと説明を受けながら思った。

 

自分の家に戻って手紙を書いた。自分の気持ちを違った受け取られ方をされないよう、相手に伝えるには文章にするのが1番だと思ったからだ。実際文章にしたら重すぎてとても渡せるものではなかった。清書をする前にボツにした。もうちょっと軽く…だけど的確に伝えるには…と悩んだ末パワポを作った。朝、仕事が終わって帰宅するなり速攻パソコン開いて2時間くらいかけて作った。完成と同時にふと我に返りあまりの馬鹿馬鹿しさと己の必死さにひいた。睡眠不足でどうかしていたのだと信じたい。

かれこれ1週間未だ伝えられず。結婚したいのかもよくわからなくなってきた。沈。